商店の店先でタラをつまみにビール1杯…韓国の20・30代に人気
2019.05.08 10:48

 「ここのニラチヂミは4000ウォン(約400円)だけど、とてもおいしいです。狭いし古いし不便だけど、それがまたいいんです。映画で見ていたソウルの昔の路地裏を探検するような気分というか…」

 ソーシャルメディア広報代行会社で働くキム・ハナさん(29)は、週末にソウル市鍾路区の「ソウル食品」に行ったときの話をしてくれた。キムさんは自称「店ビール・マニア」だ。店ビールとは、「店のビール」を略した言葉。近所の小さな商店の前で気軽にビールを飲むことを言う。

 店ビールは本来、1980年代に全羅北道全州市で始まり、焼きスケトウダラや焼きイカなどのように簡単なつまみを提供していた。店ビールがここ数年、全国に拡散しているようだ。最近、『ライフ・オン・マーズ』のようなテレビドラマや映画などで主人公たちが店の前でビールを楽しむシーンがたびたび登場し、今になって若い世代の間でブームになっている。過去に回帰する「ニュートロ(ニュー+レトロ)」が流行している上、長引く景気低迷の影響で、消費者たちが財布のひもを緩めやすい、安くて楽な場所という利点もある。人気が広まっているのを受け、古いスーパーマーケットでは売り上げアップを図るため、店ビールを始めるというケースもあるが、新たにオープンする飲食店が初めから「店ビール・スタイル」を標榜するケースも少なくない。

◆ささやかな思い出を売る店

 ソウル市鍾路区益善洞の「亀スーパー」は、2015年に韓屋(韓国の伝統家屋)を改造し、オープンした店だ。もともとは益善洞の住民たちが通う軒店だった。指定ごみ袋や洗剤のような生活用品を主に販売していた。店の前にある縁台で住民たちがビールを飲むようになり、今の形態になった。練炭に火をつけ、うちわであおぎながら焼いたタラやイカ、カワハギが代表的なおつまみメニューだ。しょう油を混ぜたマヨネーズに刻んだ青陽唐辛子を加えたものにつけて食べる。午後3時ごろ開店するのだが、店を開けるやいなや席が埋まってしまう。誠信女子からほど近いソウル市城北区東仙洞の「ソンファ・スーパー」も、酒と簡単なつまみを味わえるスーパーマーケット。玉子焼き4000ウォン、トッポッキ(餅の唐辛子みそ炒め)3000ウォン(約300円)などのようなメニューが懐かしい。

 ソウル市麻浦区望遠洞の「望遠スーパー」、ソウル市鍾路区の「ノガリ(スケトウダラの幼魚)スーパー」、大邱市北区古城洞の「トラ・スーパー」、慶尚北道慶州市の「ファンナム住宅」、慶尚南道金海市の「カラク商会」、全羅北道全州市の「カタツムリ・スーパー」なども、店の前でビールを楽しむスタイルで人気だ。プラスチック製のいす、狭くて素朴な店内、花柄の器に盛られた焼きイカや焼きスケトウダラのようなつまみを提供するささやかなスタイルだが、20-30代は「真新しい」として熱狂している。

◆早く軽く楽しく1杯!

 スーパーの前で長い間座って酒を飲むのは簡単ではない。短い時間で軽く、退社後に1杯楽しむ若い世代の感性に、店ビールはマッチしている。ソウル市竜山区の「ウリ・スーパー」は、さまざまなビールを求める人たちに広く知られている場所で、大型スーパーでもなかなか見られないような輸入ビールがたくさんあるが、スナック菓子のほかにはほとんどつまみを置いていない。店主キム・ヨンスクさん(59)は「客の多くがビールを1、2本軽く飲んで帰っていく」と話している。ソウル市江東区千戸洞の「ユミ・マート」もさまざまな輸入ビールを提供している店。精肉店とスーパーを一緒に営んでいるのが独特だ。

 許可を受けずに野外で酒を提供するのは違法だ。多くの店ビール店が、最初はスーパーや商店として登録し、一般飲食店に業種を転換しているのはそういう理由からだ。鍾路区庁保健衛生課のキム・ナムフェ主務官は「イカを焼いて出したり、カップラーメンに熱湯を注ぐくらいなら許可している」と語った。

チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版