生き生きとした隠喩と象徴…韓国の20ー30代は児童書を読んでいる
2021.04.09 10:12

 短く簡単な言葉と魅惑的な絵。子どもたちのための本を大人たちが買い求めている。オンライン書店の口コミやソーシャルメディアでは、子どもが対象の童話や絵本を読んで表紙の証拠写真と書評をアップする大人たちが増えている。「感動的だ」「美しい」「癒された」「私たちの人生そのものだ」「泣いた」といった感想が多い。読書の危機の中、童話・絵本の出版数と販売量はコロナ禍の一年間に増加。教保文庫によると、今年1ー2月に出版された幼児・児童用図書は1447種で前年同期に比べ5%増え、販売量はおよそ20%増加した。子どもたちが家にいる時間が増えたためだけではない。児童書出版社の関係者は「以前は親がまず読んで子どもに勧めていたが、最近では自分が読みたくて児童書を購入する若い読者が増えている」とコメントした。

絵本『私は川の水のように話します』の1ページ

 児童文学作品ブームには20ー30代が影響を及ぼしている。先月出版された童話『長い長い夜』は、海を探して旅をするサイとペンギンの友情を描いた144ページの短い物語で、小学校5・6年生向けの本だ。年間1万部売れればベストセラーと言える児童書市場において、1カ月で1万3000部売れ、人気を集めている。オンライン書店アラジンによると、『長い長い夜』を購入した読者の半分は子どもがいる40代だが、30%が20ー30代だった。一般的に児童書の購入者の80ー90%が40代だということを考えると、異例の状況と言えるだろう。

童話『長い長い夜』/文学トンネ

 1月に出版され、幼児部門で10週間にわたり販売量1位(アラジン基準)を守った絵本『私は川の水のように話します』も、読者全体の38%が20ー30代だ。カナダの詩人ジョーダン・スコットの自伝的な物語に叙情的な絵をつけた52ページの本は、上手にしゃべれない子どもが、休むことなく流れる川の水と向き合い、自分を肯定するという内容だ。最初から大人の読者を念頭に置いた児童向け絵本も出版されている。詩集やエッセイで大衆的な成功を得た詩人パク・ジュンは初めての絵本『私たちはアンニョン』を出版した。犬と鳥が登場する1編の詩に絵をつけた80ページの本で、これを購入した読者の半分は20ー30代だ。

 わたしたちの社会に芸術性のある創作児童文学ジャンルが本格的に登場したのは1990年代半ばとみられる。「子どものための文学」という概念がなかったころは、偉人伝や世界文学要約本を読むくらいだった。児童文学評論家のキム・ジヨンは「自由に幅広く児童文学作品に接していた世代が、大人になってからも児童書を買い求めている」とした上で「キダルト(子どものような趣向や感性を持った大人)現象に見られるように、これらの人々は好きだった思い出を長い間持ち続けることを恥ずかしく思わない」とコメントした。

詩の絵本『私たちはアンニョン』/ナンダ

 読書に費やす時間が多くない状況で、児童書は30分ー1時間ほど投資すれば深く読むことができるのが長所と言えるだろう。手軽に読めて、人生に対する象徴や隠喩があふれている。大人たちは子どもの話に自分の姿を探し求め、意味を与える。『長い長い夜』で、それぞれ異なる存在であるサイとペンギンが絶望に直面しても力を合わせて海へと向かう旅程に感情移入し、癒しと勇気を得る。『私は川の水のように話します』に登場する上手に話せない子どもの姿から、社会生活が苦手な自分を発見し、癒しの過程をたどる。児童文学評論家のソン・スヨンは「大人の小説が現実の中にある矛盾をそのままあらわにするとしたら、子ども向け小説は童心や理想的な世界の回復を目指す」とした上で「文学作品でさえ、厳しい現実を確認したくない若い読者たちが児童書を求めている」とコメントした。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版