シェフを信じて食べるだけ! 韓国で今、おまかせコースが人気

  •  「二日前にいらっしゃったお客さまがまた来てくださいました。一度お出ししたものをまた召し上がるのでは飽きるでしょうから、16品のコースを新しいメニューにして提供しました。とても満足してくださいました」。ソウル市江南区三成洞にある焼き肉店「モトゥンギウ・ライプ(ripe)」のキム・ホユン・シェフ(34)はこう話した。同店は3カ月前から最高級韓牛(韓国伝統の肉牛)を使ったコース「韓牛おまかせ」サービスを始めた。メニューを選ぶ必要はない。シェフがその日のメニューを決めて提供してくれる。

     キム・シェフは「食事をするときコストパフォーマンスを考える時代なだけに、なかなか食べられないものを求める人も増えている。そのハイエンドの要求を読み取って料理をつくっている」と語った。
  •  最近、美食家たちの間では「何を食べようか」と同じくらい「誰がつくったものを食べようか」を悩むのが話題になっている。シェフやバリスタ、バーテンダーが自由に決めたメニューを出す、「おまかせ」サービスを提供する店が増えている。日本語で「信じて任せる」という意味のこの言葉は、これまで日本料理店で主に使われていた。日本料理店のシェフが料理の内容を考え、客に提供していたのを指し示す。

     しかし最近では、その意味がさらに広がっている。日本料理だけでなく、焼き肉店やタイ料理店、天ぷら店などでも「おまかせ」サービスが人気だ。最近ではコーヒーやデザート、カクテルなどドリンクコースにも「おまかせ」という言葉が使われている。
  • ◆信じて任せる美食キュレーション

     ソウル市瑞草区瑞草洞にあるタイ料理店「クンソムチャイ」にはメニュー表や料理の写真がない。タイ料理を16年にわたりつくって来たキム・ナムソン・シェフ(39)は「いくら多彩なメニューを考えても、多くの人が写真を見ながら結局トムヤムクン、パッタイなどを選ぶのです。普段食べているもの以外にもおいしい料理が本当に多いのに、これを伝える方法はないかと考え、写真を外すことにしました」と語った。その代わり、料理を7品または9品提供する「タイ料理おまかせ」サービスを始めた。100%予約制で始めたところ、思ったより反応がよかった。「前日酒を飲み過ぎた」という人にはスープ料理を、「肉が好き」な人にはスープご飯や煮込んだ肉などを中心に料理を提供するというやり方だ。

  •  最高級韓牛焼き肉店は最近、「おまかせ」の激戦区だ。ソウル市江南区狎鴎亭洞にある「口伝童話」のパク・チュンヒョン・シェフも、14年間日本料理をつくってきたが、今年から新たに韓牛おまかせコースを始めた。「質の良い韓牛のザブトンはやや大トロのような味がします。これにウニやトリュフをのせると一風変わった料理になり、こうしたメニューが特に好まれています。想像力と創意力を発揮し、これまでの殻を破った料理を自分の好きなように提供できるので楽しいです」

     ソウル市竜山区漢南洞にある日本式居酒屋「かみそり」は串焼きや揚げ物などのつまみをおまかせで出しており、コーヒー専門店「ビーンブラザーズ」は江南店などで不定期に「コーヒーおまかせ」を提供している。現在、次のおまかせサービスを準備中だという。1-2万ウォン(約1000-2000円)払って決められた期間に前もって予約すれば、ベテランののバリスタがさまざまな食材とコーヒーの味のバランスを考えながら5-6品のデザートを出してくれる。

    ◆小食と貪食の間

     一人で食事をしたり酒を飲んだりするおひとりさまは、おまかせブームを巻き起こしたまた別の主役と言える。写真共有ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「インスタグラム」を通じ美食家として知られている医師ファン・ヒョンミンさん(48)は「一人または二人で食事をすると、あれこれいろいろな料理を注文することができず、おまかせサービスを行っている店によく行っています」と語った。一人でも「料理を少しずつ長く楽しめるのがいい」というわけだ。最近、ソウルで各種おまかせ料理を出している店を訪れ味を見ているという「牛家」のホ・セビョン代表は「小食の時代だが、貪食の欲求はむしろ大きくなっています。双方の要求を満たしてくれるのがおまかせサービスではないでしょうか」と語った。
ソン・ヘジン記者
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