秋の智異山・蟾津江をめぐる求礼の旅

  •  智異山は赤い紅葉の服に着替え、首には山を囲むように流れる蟾津江のマフラーを巻いている。その中にある村で、秋の体験を楽しみ、寺刹で自分自身を振り返り、降り注ぐかのように秋の夜空を彩る星のロマンが手招きする全羅南道求礼郡に出掛けてみよう。

    秋を告げる野花の饗宴

     「老姑壇」は天王峰、般若峰とともに智異山3大峰と呼ばれる。智異山縦走のスタート地点でもある。老姑壇から景色を見下ろすと、美しく色づいた紅葉が広がっている。

  • 老姑壇から眺める秋の空は高い。
    ▲ 老姑壇から眺める秋の空は高い。
     老姑壇峠に至る老姑壇コースは最も緩やかな道で、智異山の美しい風景を思う存分楽しむことができ、一年中多くの人が訪れる。今は探訪可能な時間に誰でも老姑壇の頂上まで行くことができるが、ここが一般人に開放されたのは最近のこと。自然破壊が深刻だった老姑壇の復元作業のため、およそ10年ほど出入りが厳しく制限されていたからだ。そんな努力の末、現在の老姑壇は高山地帯の花園と呼ばれている。個体数がだんだん増えているということで、花一つ一つがとても貴重だ。

  • 老姑壇の頂上は野花が満開。(写真右から時計回りに)ウメバチソウ、ヨメナとカライトソウ、ゲンノショウコ。
    ▲ 老姑壇の頂上は野花が満開。(写真右から時計回りに)ウメバチソウ、ヨメナとカライトソウ、ゲンノショウコ。
    「グルメ」「健康」「楽しみ」三拍子そろったパーク

     自分や家族が食べる菓子、ラーメン、パンなどがどのように作られるのか、その生産過程を目にすることができる場所「求礼自然ドリームパーク」。消費者たちが安心して口にすることができる食品を生産し、品質の高い食品を開発するエコ・オーガニック食品クラスターだ。商品を生産する加工業者と共同で設立された管理会社で、文化支援施設を備えている。

  • 求礼自然ドリームパーク
    ▲ 求礼自然ドリームパーク
     ほかのどの工房よりも清潔を重視する韓国産小麦工房が最初の訪問場所だ。ガラス越しにチーズケーキを作る様子が見える。ここでは小麦粉だけでなく、グルテンも自分たちで作って使用する。ラーメン工房では、ぐにゃぐにゃ曲がった麺が出てきて、蒸す、揚げるといった工程を経る、不思議で面白い場面を目にすることができる。

  • 求礼自然ドリームパークでは、韓国産小麦を使ったクッキーやピザ作り体験を楽しむことができる。
    ▲ 求礼自然ドリームパークでは、韓国産小麦を使ったクッキーやピザ作り体験を楽しむことができる。
     もみもみ工房では、韓国産小麦を使ってクッキーやピザを作る体験が可能。韓国産小麦に対する説明も聞き、キレイに手を洗った後、先生の指示と助けを受け、クッキーを作る。生地にトッピングをのせた後、オーブンで焼くと、香ばしいピーナッツバターの香りが工房に漂う。完成したクッキーを一つずつ味見すると、自然と笑顔になる。信用できる材料で自ら作った食べ物なので、なおさらそうだ。味も楽しみも生かした料理体験と言える。

    母親に抱かれているように温かい華厳寺

     「母の山」と呼ばれる智異山、その智異山に足を踏み入れると、華厳寺にたどり着く。華厳寺の境内に入るため、華厳橋を渡る。「愛するということは自分自身を消すこと、決して与えること」。華厳橋を渡ると、道のあちこちに詩が刻まれた碑石がある、詩の園が見えてくる。珠玉のような文言が、足を止めさせる。

  • 智異山に抱かれた華厳寺
    ▲ 智異山に抱かれた華厳寺
     華厳寺は大雄殿、覚皇殿という二つの建物を同等に浮き彫りにし、調和をなしている。この美しい寺刹も、殿閣と殿閣が、咲く花々が、芽吹く木々が調和をなしていなかったら、300年という時間、守り続けてこられただろうか。華厳寺の石段に座り、しばらく思いをこらしてみる。

     華厳寺の魅力は、大雄殿の裏手にある。森の小道を通り過ぎると、寺の庭に石塔が一つ建っている九層庵にたどり着く。かんな掛けをしておらず、表面がよじれたカリンの木の特徴を生かした2本の柱が軒を支えている姿はまるで「自然の道理に逆らってはいけない」という仏教の悟りを投げ掛けているようだ。

    自転車で走りながら眺める蟾津江の風景

     求礼は昔から三つのものが大きく、三つのものが美しいという意味の「三大三美」のふるさとと呼ばれている。三大は智異山、蟾津江、求礼野原、三美は美しい景観、あふれるほどの産出物、豊かな人情をさすと言う。

  • オソム圏域村では、自転車に乗って求礼の三大三美の魅力を感じることができる。
    ▲ オソム圏域村では、自転車に乗って求礼の三大三美の魅力を感じることができる。
     村に入ると「自転車お貸しします」という案内が目に入って来る。1人乗り・2人乗りの自転車があり、自転車に乗れなくても2人いれば問題ない。本格的な自転車ツアーに先立ち、まずはコースを把握する。

  • 圏域村の自転車コース
    ▲ 圏域村の自転車コース
     オススメのコースは桜満開の道(オソム圏域-東海村)、休み休みの道(オソム圏域-ウォルピョン村)、邑内マシル道(オソム圏域-求礼室内体育館)、蟾津グダル道(オソム圏域-蟾津江魚類生態館)の四つ。

  • オソム圏域の美しいサイクリングロード3コースで目にする蟾津江とフリーマーケット「コンジャン」。
    ▲ オソム圏域の美しいサイクリングロード3コースで目にする蟾津江とフリーマーケット「コンジャン」。
     西施川に近づくにつれ、散策路に多くの人々の姿が見える。コンジャンと呼ばれる村のフリーマーケットだ。コンジャンという名前は「コン(豆)のように小さいけれど栄養抜群で充実したジャント(市場)を楽しく開こう」という意味から来ている。一般市民らが参加するフリーマーケットで、自家製の農産物、手工芸品、使わない品物などを持ち寄った。まさに風景と楽しみが調和したサイクリングロードだ。

    蟾津江と智異山連峰を一望できる四聖庵

     竹麻里にある海抜500メートルの鰲山の頂上に位置する四聖庵は、蟾津江と智異山連峰を一望できる、求礼の名所の一つ。

  • 四聖庵
    ▲ 四聖庵
     四聖庵の入り口と言える六悔堂から羅漢殿へ。絶壁に作られた階段を上ると、秋にも青々とした竹林に囲まれた羅漢殿にたどり着く。四聖庵前の狭い階段を上ると、樹齢800年にもなるケヤキをはじめ、願い岩、地蔵殿、サムシン閣、トソン窟などが順に目に入って来る。再び絶壁に設置されたデッキを過ぎ、険しい階段、山道を少し上がっていくと、鰲山の頂上にたどり着く。頂上付近の展望台に立つと、荘厳な智異山の稜線、天下の明堂に挙げられる雲鳥楼、広い野原、蟾津江の叙情的な風景が美しい。

    「花」、再び芸術作品として花開く

     額の中の、やや平凡に見える風景画。しかし、その中を詳しく見てみると、絵の具が使われておらず、花びらと茎しかない。赤く色づいた秋、額の中の風景を彩る自然の産物はまだ青々とした春だ。これは花や植物を使って作った押し花作品だ。

  • 韓国押し花博物館
    ▲ 韓国押し花博物館
     世界唯一の押し花博物館である「韓国押し花博物館」は17年前、野花を栽培する農民たちのための小さな展示館としてスタートした。その後、国内外での公募展を通じて収集した押し花作品が次第に増え、かなりの作品が植物資源のDNA保管所的な役割まで果たしている。

  • 単純な作品を超え、植物資源のDNA保管所的な役割を果たしている博物館
    ▲ 単純な作品を超え、植物資源のDNA保管所的な役割を果たしている博物館
     押し花展の受賞作などを常設展示する空間には、押し花を使ったアンティーク家具、目覚まし時計などの生活用品や装飾品が展示されている。さまざまな作品を鑑賞すればするほど「これが本当に押し花なのか」と疑問を抱かざるを得ない。自分の目を疑わせるほど精巧な作品ばかりということだ。目が香しくなるほど多様な押し花作品を鑑賞することができる。

    8年前の星の光を浴びる秋の夜

     「季節が過ぎていく空は秋で満ちあふれています。私は何の心配もなく、秋の中の星たちをみな数えられそうです」。尹東柱(ユン・ドンジュ)の『星を数える夜』の一節だ。蟾津江の近くには、尹東柱の詩に登場する秋の夜空の星たちに出会える谷城蟾津江天文台がある。

  • 谷城蟾津江天文台
    ▲ 谷城蟾津江天文台
     天文台の1階に入ると、天井と壁に星座や惑星など星に関する写真が飾られている。本格的に星を眺める前、大型ドーム型スクリーンを誇る天体投影室で30分ほどの動画を鑑賞する。ドーム型になっているので、3D効果が感じられ、まるで宇宙の中にいるような気分になる。

     2階は韓国天文研究院が国内の技術で製作した反射望遠鏡が設置されている主観測室、精密度を誇るさまざまな望遠鏡が備えられた補助観測室に分かれている。天井にスライディングルーフ(6メートル×8メートル)が開くと、あちこちから観覧客の歓声が上がる。都心では見られなかった星たちがはっきりと見える。

  • 主観測室と補助観測室では、さまざまな天体望遠鏡を使って星を鑑賞することができる。
    ▲ 主観測室と補助観測室では、さまざまな天体望遠鏡を使って星を鑑賞することができる。
     本格的な天体観測のため主観測室に移動し、肉眼または望遠鏡で星を眺める。昼は太陽観測をし、夜には星座の説明を聞いたり天体観測をしたりする。「地球から最も近くにある星の光が到達するのに8年ほどかかります」。600ミリメートルの巨大な望遠レンズで夜空を見上げていたとき、研究員の言葉にびっくりした。望遠鏡で見たから近いと感じたのだろか。星と地球との距離がどれほど離れているのか、今更のように感じる。

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
トラベル の最新ニュース