全州=ビビンバだけじゃない! 実はそばの名店多し

  •  全羅北道全州市と言えば、誰でもビビンバや韓定食を思い浮かべるだろう。全州は2012年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が食文化創造都市に指定した食の都だ。しかし、ソウルと全州を行き来しながらカフェを営んでいる美食家キム・ヨンジュンさんは「人々にあまり知られていない、隠れた全州の味がある」と語った。一体何だろうか。「そばだ。甘じょっぱくて味わいのある、全州ならではのスタイルがある」。実際に全州市内や韓屋(韓国の伝統家屋)村一帯には冷やしそば専門店が多い。数十年の伝統を誇る老舗、達人と呼ばれる人たちが営む店もある。全州市庁観光事業課のキム・チャンファン主務官はこう話す。「日本文化とわが国のものが混ざった群山市がすぐ近くにある。全州もその影響を受け、独特な味を誇る。特にここの味付けはこの世のどこにもない。やや甘みがあってしょっぱく、こくがある。冷やしそばもそうだ」
  • ◆甘みがあってしょっぱい全州の味

     午前10時半になると、全州市完山区中央洞の「ソウルそば」に客が一人、二人とやって来る。いすに座る前から「そばお願いします」と叫ぶ。そばは、そば生地を薄く延ばし、細長く切った麺を日本式にいう言葉。メニューはそば(8000ウォン=約800円)と替え玉(3000ウォン=約300円)のみ。1955年から営業しており、創業64年になる。毎年3月から10月まで営業し、11月から2月までは店を閉じる。イ・ウンスン社長は「メニューがそばだけなので、冬には提供するものがないから店を閉じている」と語った。「みんなにほかのメニューをもう一つくらい出せばいいのにと言われるが、できそうにない。そば一つ作るだけでも忙しいのに」。器に盛られたそばには細かく刻んだのりとネギだけがのっている。つゆはかすかに甘く、塩気があり、香しい。麗水・統営産のカタクチイワシや機張産の昆布だけでだしを取っているからだという。「湖南(全羅道)地方の人たちは汁に砂糖をいれるほど甘い味を好むでしょう? だから全州のそばつゆも甘い。それに、全州の人たちは鰹節をあまり使わない。なぜかは分からないけれど、煮干しだしが多い」

  •  全州市完山区校洞の「ベテランカルグクス(韓国式うどん)」も老舗だ。公式的には開業1977年。実際にオープンしたのはもっと前だ、と全州市民たちは言う。もともと全州聖心女子中学・高校の生徒たちの行きつけの店だった。 カルグクスやチョル麺(歯応えのある韓国の麺料理)、ギョーザなどを提供していたが、2代目に引き継がれ、そば(7500ウォン=約750円)、コングクス(豆乳スープ麺、8000ウォン)も売り出した。全州本店は朝から込み合っている。多いときは一日8000食売れたという。この店の冷やしそばはかなり甘く、非常にさわやかで、迫力のある味を誇る。キム・ウンソンさんは「つゆの味がソウルに比べ甘く、日本もものよりも濃い。全州ならではの味で、野暮ったいけれど、だからこそひかれる味」と語った。創業者である母親が今も厨房に立つ。従業員たちは「特にお母さんの麺のゆで方は誰も真似できない」と話している。

    ◆単純な味、慣れ親しんだ味

     全州市徳津区金岩洞の「金岩そば」、完山区西新洞の「全州そば」、完山区殿洞の「チンミ家」も、全州市民に人気の店だ。甘さとしょっぱさが調和をなしている。「全州そば」を営むキム・スアンさんは「全州の人たちにとって冷やしそばは、ご飯より慣れ親しんだ味」と語った。「ご飯とキムチのように単純な味で、身近なメニュー。私たちにとっては特に変わったものではないが、外から来た人たちには目新しいかもしれない」。話をしている最中にも、常連客が夢中で冷やしそばをたいらげ、店を後にしていった。

全州= ソン・ヘジン記者
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