治癒の森を歩き、黄土部屋で一休み /慶北・英陽

  •  大きな峠を意味するデティを村の名前にした「デティ峠村」。デティ峠は「陸地の中の島」と呼ばれる慶尚北道英陽郡の村のうち、日月山に囲まれ、母親の懐のように静かで温かい、小さな村だ。やせた土地だが山菜が豊富なデティ峠は自然治癒村として生まれ変わった。デティ峠の天然の森林は優れた景観だけでなく、歴史と趣が感じられる大切な場所だ。松林の勇壮さ、モンゴリナラの細やかな感じは、人々を自ずから歩きたくさせる。

     秋が来たようだ。喜んで足袋はだしで駆け回りたくなり、デティ峠村の美しい林道「ウェシ足袋道」に出掛けた。

    ゆっくり歩けば「体」も「心」も癒される

     デティ峠の美しい林道は、韓国を代表する清浄地域である慶尚北道青松郡から英陽郡、奉化郡、江原道寧越郡を結ぶ「ウェシ足袋道」の一部だ。ウェシ足袋道という名前は、詩人・趙芝薫(チョ・ジフン)の詩「僧舞」に登場するウェシ足袋に似ていることから付けられた。全長240キロメートル、13区間に分かれている。デティ峠の林道は治癒の道(8.3キロメートル)とかなり重なっている。

     初秋の風景が広がるデティ峠の林道は静かだ。誰かに急かされることなく、ゆっくり歩くことができる。出発地点は日本による植民地時代の1939年、日月山で採掘された金・銀・銅・亜鉛など鉱物を処理するために作られた「竜化鉱山選鉱場」。日月山鉱山で採掘した金・銀・銅・亜鉛を日本の鉱業会社が建設した選鉱場に運び、鉱物を製錬していた場所だ。

  • 初秋の風景が広がるデティ峠の林道とそのスタート地点にある竜化鉱山選鉱場
    ▲ 初秋の風景が広がるデティ峠の林道とそのスタート地点にある竜化鉱山選鉱場
     自生花公園を後にし、治癒の道へと向かう道路の入り口で、三重の塔を目にすることができる。小さな家の裏の豆畑にあるため、見過ごしてしまいそうだ。塔の大きさと形式から、おそらくあったであろう寺の規模は決して小さくなかったものと思われるが、塔は新羅時代の形式だということ以外、何の記録もない。

  • 写真3:治癒の森で目にすることができる三重の塔と、まるで童話に出てきそうなバス停留所
    ▲ 写真3:治癒の森で目にすることができる三重の塔と、まるで童話に出てきそうなバス停留所
     塔を後にし、アスファルトの道に沿って歩いていくと、太陽と月の説話を背景にしたバス停留所にたどり着く。太陽と月から名前を取った日月山を象徴するため用いたキャラクターだ。慶尚北道内陸部で最も高いところにあるため、太陽や月が浮かぶのを真っ先に見ることができ、山の名前も日月山。休憩所ではないがバス停留所に少し座って休憩する。いつ来るのか分からずひたすら待つ田舎のバスのように、とりわけ暑かった夏のせいでなかなか来そうもなかった秋がそこまで来ている。

     道を渡り、細い林道に入った。モンゴリナラ、ダンコウバイ、クヌギ、ヤマウルシがうっそうと茂り、さまざまな野花が咲き乱れていた。原始的だが生命力があふれている。こうした森の気運が、歩く人の体も心も癒してくれるような気がする。木1本、草1株、石一つに至るまで、むやみに触れられていない。自然は本来の姿が最も美しく、価値があると信じられているからだ。こうした努力のおかげで、デティ峠の林道は「美しい森全国大会」林道部門で調和賞を受賞した。

    黄土部屋で味わう素朴な「田舎料理」

     村に下りた。デティ峠には28世帯、40人余りが暮らしている。雪が多いせいか、屋根を薄い石片で葺いた家が建ち並んでいる。住民たちは、村を訪れた人たちが疲れた体を休めることができるよう、黄土家を民泊として運営している。自分で薪を燃やし、きつい煙突掃除までしなければならないが、自然と人間の健康を考えている点が各家のあちこちに感じられる。セメントの代わりに体にいい黄土を使用し、伝統的なオンドル方式を再現した。柱や垂木は全て、金剛松を用い、床には石を敷いて風情を添えている。

  • 写真4:デティ峠の住民ら9世帯が運営している黄土家にはそれぞれ一風変わった名前が付けられている
    ▲ 写真4:デティ峠の住民ら9世帯が運営している黄土家にはそれぞれ一風変わった名前が付けられている
     「お年寄りの食事にスプーンをもう一つのせたようなもの。おかずは大したことありません。田舎で食べるものはだいたい同じでしょう」。お年寄りがわが子に用意してあげるような、素朴だが真心がこもった田舎料理だ。一生懸命畑仕事をしながら育てた有機野菜で作ったさまざまなおかず、そして母の情が感じられる大盛りのご飯を見ると、毎食ここに来たくなる感じだ。村の人は「うちの村でとれる自然の食材で食事を作り、調味料文化に慣れた多くの人たちに一休みしてほしい」と語った。

  • 写真5:素朴だが真心が感じられる田舎料理
    ▲ 写真5:素朴だが真心が感じられる田舎料理
     お腹いっぱいになったら黄土部屋で横になって休んでみる。ちょっと開いている戸の間から秋風が吹き込んでくる。まるで古い母の実家にやって来たような感じで体はだらけ、眠くなってきそうだ。デティ峠が「自然治癒生態村」としてスローシティーを追求する価値にふさわしい瞬間だ。

    有機農業体験に健康、人情はおまけ

     村の人が「うちの村では農薬をしているでしょうか。使用していないでしょうか。うちの村はお金がないから農薬をまけないんです」と冗談を言うと、体験参加者たちから笑いが起こる。治癒村らしく、村では農作物を有機栽培している。サツマイモ畑に鍬を入れる。その後、サツマイモのつるをつかんで引っ張ると、さまざまな大きさのサツマイモが顔を出し、笑顔が広がる。ざっと10個はついているようだ。

  • 写真6:農作物を有機栽培しており、村人が栽培している農作物の収穫体験ができる
    ▲ 写真6:農作物を有機栽培しており、村人が栽培している農作物の収穫体験ができる
     田舎の人情は昔の話と言われるが、デティ峠村は例外だ。村を移動する途中、サンチュが本当においしそうだと言うと、畑の主人はそれをとって食べるよう勧めてくれる。「お金ですか? いりませんよ」。むしろ、何のお構いもできず申し訳ない、というのがデティ峠村の人たちの人情だ。

     村では収穫期である9月になると新米で米パン作り、村の特産物である唐辛子を使った唐辛子みそづくり、青リンゴを使ったリンゴジャム作りなど、さまざまな体験が待っている。また、村の花を特殊な液に漬けて作るハーバリウム、木工芸などの文化体験プログラムも企画されている。

     デティ峠のハン・ドンヒ村発展委員長(63)は「第1次農産物生産、第2次食品加工、第3次黄土部屋と自然食を結び付けた自然治癒体験プログラムも、今までの体験型から今後は滞留型中心に運営し、より多くの都会の人たちに訪れてほしい」と語った。

    村の詳しい情報

    【村の情報】

    住所:慶尚北道英陽郡日月面英陽路4159
    連作先:054-682-7903
    ホームページ:http://www.daetigol.co.kr/

    【村の紹介】

     自然景観がすばらしい慶尚北道英陽郡のデティ峠村は、休息とロマンを楽しむのにピッタリの場所だ。自然景観だけでなく、村の人たちの生活が感じられる香しいにおいに、つい足を止めてしまう。村を囲む小さな道、ウェシ足袋道をゆっくり歩き、村の農家では旬の農産物で作られた田舎料理でお腹を満たすことができる。黄土部屋で一休みすると、日常生活の中で忘れかけていた癒しに気づく。

    【宿泊案内】

     デティ峠村の黄土オンドル部屋は9軒の農家が9棟運営している。1棟に大きな部屋と小さな部屋が一つずつある。黄土オンドル部屋は、体にいいとされる黄土と伝統的な暖房方式であるオンドルの組み合わせでできている。柱や垂木、屋根に使われている材料は金剛松だ。もう一つ驚くべきことは、暖房に使われる燃料は100パーセント木だということ。人体に有害な廃木材ではなく、良質な木材だ。客室内部にはシンクをはじめ各種炊事道具、食器類、冷蔵庫、炊飯ジャー、コーヒーポットがある。内部にはきれいなトイレ、シャワー設備もあるので、歯ブラシだけ持参すればよい。

    【周辺の農村観光案内】

    英陽ホタル天文台:英陽ホタル天文台はアジアで初めて夜空保護公園に指定された英陽国際夜空保護公園にあり、「最も星を眺めるのにいいところ」に挙げられる。夜空には星がどれほど多いのか分からせてくれる場所だ。周辺に民家の明かりがないためだ。生態公園周辺の漆黒の闇の中で美しく輝く星、宝石のように光るホタルの群舞に出会える。案内人が夜空の星にどれほど多くの特徴があるのか、星座が季節によってどれほど多様に変わるのかなど、神秘的で興味深い星の話を聞かせてくれる。

    住所:慶尚北道英陽郡首比面ホタル路129
    連絡先:054-680-6045
    ホームページ:https://twitter.com/FireflyAstro

    芝薫文学館:青鹿派の詩人で志操論の学者だった趙芝薫を記念し設立された文学館だ。夫人・金蘭姫(キム・ナンヒ)さん直筆の看板が掲げられた文学館に入ると、170坪(約560平方メートル)規模の平屋建ての木造瓦屋根の建物が訪問客を迎える。文学館に入ると、趙芝薫の代表作である「僧舞」が流れており、順路に沿って趙芝薫の人生やその精神を垣間見ることができるさまざまな遺物が展示されている。

     文学館内では趙芝薫の少年時代の資料とともに、詩集「青鹿集」など趙芝薫の詩や散文などを目にすることができ、趙芝薫の逸話を子どもたちに分かりやすいよう漫画で伝えられるようにしていう。文学館を出る前、一方の壁面には趙芝薫の人生を示す100枚の写真が掲げられている。また、さまざまな映像資料をはじめ、ヘッドホンを通じて趙芝薫の肉声による詩の朗読を聞くこともできる。

    住所:慶尚北道英陽郡日月面ジュシルキル55芝薫文学館
    連絡先:054-682-7763
    ホームページ:http://jihun.yyg.go.kr/

    日月山:晴れた日、日月山(1219メートル)イルジャ峰に登ると、東側に東海(日本海)や鬱陵島が見える。太陽と月が昇る様子を見られることから、日月という名前が付いた。頂上ではイルジャ峰とウォルジャ峰が向かい合っているが、最も高いイルジャ峰から見事な風景を眺めるとよい。慶尚北道内陸部で代表的な日の出の名所で、年初には全国各地から多くの人が訪れる。日月山の日の出は英陽の自然八景のうち最高に挙げられる。

    住所:慶尚北道英陽郡日月面竜化里
    連絡先:054-680-6062
    ホームページ:http://jihun.yyg.go.kr/


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