なぜ練り物? 韓国で遊説中の候補者たちに人気のメニュー

  •  なぜ練り物なのだろうか。総選挙を前に遊説する国会議員候補者たちを見ながらふと疑問に思ったことだ。食べ物は政治家にとって、どれほど自分が人間的かを示すことができる、強力な政治的道具と言える。「私は有権者の皆さんと同じです」とアピールするため、在来市場を訪れる候補者たちは、一生懸命に食べまくる。最も短い期間に有権者との距離を縮めることができるチャンスを逃すわけにはいかないからだ。

     ホットク(韓国式おやき)、あんまん、小豆粥、豚足、スンデ(豚の腸詰め)スープ、ソルロンタン(牛テールスープ)、のり巻きなど、庶民たちがよく食べているメニューが主流だが、これまで何度も大統領選挙・総選挙で候補者たちが特に練り物を食べる姿が記者の目についた。

     ある国会議員にインタビューをしたことがある。その議員に「遊説の際、候補者たちはひときわ練り物が好きなのか、もしそうなら、たくさんのメニューがあるのにどうして練り物なのか」尋ねたことがある。議員が教えてくれた理由は二つだった。

     「遊説中にはかなりたくさん食べなければなりません。有権者が食べてみてと言って差し出してくださるものなので、最大限おいしくいただかなくてはなりません。しかし、すでにお腹がいっぱいの状態でおいしく食べ切るのは簡単ではありません。味を見るだけではイラっとするでしょうし、完全に好感度が下がりますから。だから遊説のときは量が少なくて一口で食べられるメニューがよいのですが、そんなとき練り物がピッタリなんです。また、ものを食べている姿をきれいに撮影してもらうのは難しいんです。トッポッキ(餅の唐辛子みそ炒め)は赤いたれが口の周りについてしまうかもしれないし、ホットクはアツアツのはちみつ(中身)がはねて服を汚したり、やけどをすることもあります。練り物はそれほど熱くなく、こぼしたり汁がはねたりしても、さほど汚く見えないので、いろいろな意味で候補者たちにとって打ってつけと言えるでしょう」

     食べ物が政治的な道具として使われるようになったのは米国が最初だった。1956年、再選キャンペーン中だったアイゼンハワー大統領はペンシルバニア州ゲティスバーグにある農場を訪れ、コカ・コーラを飲む姿を演出。英紙ガーディアンはこのときから米国の政治家たちが自分をどれほど平凡な人間なのかアピールするため、庶民的なものを食べることによりいっそう神経を使うようになったと報じている。
キム・ソンユン記者
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