特別な訓練を受けた、と脳をだましたら、実際に運動効果がアップする、という研究結果が出た。
ノルウェーのアグダー大学公衆保健学部のKolbjørn Lindberg博士の研究チームは、運動プログラムでもプラセボ効果を誘発し得るのか確認するため、20代のスポーツ選手40人を対象に研究を実施した。プラセボ効果とは、本来は薬としての効果をもたないくすりを服用しても、効き目があると思い込むことで、実際に肯定的な結果に結びつくことを言う。
研究チームは、無作為に実験対象者を二つの集団に分けた後、一つの集団にだけ特別に個別のパーソナライズ化した訓練を行うと告知した。別の集団には、一般的な訓練を行うと伝えた。その後、両集団とも20メートルスプリント、レッグプレス、スクワットなどを混合した同一の運動プログラムで10週間訓練を実施した。研究チームは訓練最終日、反動動作ジャンプテスト、20メートルスプリントテスト、バックスクワット1回最大重量確認、レッグプレステスト、筋厚超音波チェック、アンケートなどを通じ、どれくらい運動能力が向上したのか確認した。
その結果、個別にパーソナライズ化した訓練を受けたと説明されたグループは、一般的な訓練を受けたと認識しているグループに比べ、筋肉が大幅に増加し、スクワットで持ち上げられる最大重量も大きく向上したことが分かった。ほかの指標では大きな差はなかった。
研究チームは「パーソナライズ化した訓練が、希望する効果を引き出すという期待感を高めるため、志願者たちもより厳しい運動をしたのではないだろうか」とした上で「今回の研究により、医学界で証明されたプラセボ効果が運動でも同じく作用するということが確認できた」と説明している。
2019年、ニュージーランド・カンタベリー大学の研究チームも、似たような研究結果を発表している。この研究チームは実験参加者に対し、▲カフェインを飲まず▲カフェイン飲料を飲んで▲実際にはカフェインが含まれていないが、カフェインが含まれていると表示されたドリンクを飲んで走らせた。その結果、実験参加者の大部分が最後の実験でも実際にカフェインを摂取したときのように、走るスピードがアップしたことが分かった。研究チームは「スポーツ・プラセボ効果は1-3%機能向上を誘発するものとみられる」とした上で「オリンピックでメダルを取るのと決勝に進出できないくらいの差かもしれない」説明した。
なお、前出の研究結果は最近、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載された。