村上春樹の作品にも登場する「オニオンスープ」で新型コロナへの不安をやわらげよう!

  • ウイルスの恐怖が広まる中、スタミナ料理として脚光

     村上春樹と糸井重里のショートショート集『夢で会いましょう』で、年金生活を送っているライオンは、隣の部屋でルームメイトがガールフレンドと愛を分かち合う間、夜食に「オニオンスープ」を温める。いつでも温めて食べられる保存食で、寂しさも慰めてくれるからだ。このスープのまた別の機能は「保養」だ。タマネギに含まれるアリシンとクェルセチンは抗ウイルス作用を持つ。オニオンスープを一鍋つくって新型コロナウイルス感染症に打ち勝とうではないか。オニオンスープがおいしい名店のシェフにその秘法を聞いてみた。

    ◆古代ローマで始まったスタミナ料理スープ

     オニオンスープの起源は古代ローマ時代。基本的な調理法は、刻んだタマネギをあめ色になるまでいため、スープを注いで煮込むというものだ。コムタン(牛骨スープ)と似ており、量が多いほど、低い温度でじっくり煮込むほどおいしくなる。
  • ソウル市瑞草区のフレンチレストラン「TAVERN38」のオニオンスープ。4種のワイン(赤、白、シェリー、ポート)とブランデー、コニャックで風味付けしている。/キム・ジョンヨン映像メディア記者
    ▲ ソウル市瑞草区のフレンチレストラン「TAVERN38」のオニオンスープ。4種のワイン(赤、白、シェリー、ポート)とブランデー、コニャックで風味付けしている。/キム・ジョンヨン映像メディア記者
     韓国で最も古いイタリアンレストラン「La Cantina」は、牛肉でだしを取る。脂分を取り除いたばら肉にタマネギ、人参、セロリなどを入れて白濁したスープになるまで煮た後、こす。スープボウルに炒めたタマネギ、スープを入れ、焼いた食パンを一つのせた後、任実ピザチーズをふりかけてオーブンに入れれば完成。料理長のチョン・ゴンテクさんは「以前は任実チーズしかなく、それを使っていたのだが、今ではこの味を好む人がいるので他のものに変えられない」と語った。味は砂糖とコショウ、牛肉パウダーなどで整える。

    ◆18世紀のフランス王室の料理

     オニオンスープが今のような姿になったのは18世紀のフランス・パリ。ルイ15世がシカ狩りをしている最中に入った空き小屋で、戸棚に残っていたタマネギ、バター、シャンパンを使って調理し、食べたのが始まりだという。

     光化門のフレンチレストラン「L’ABRI」は、牛骨を使ってだしを取る。料理長のチャン・ジョンギさんは「牛骨を前もってオーブンに入れ、茶色くなるまで180度で30分ほど焼いてからスープにする。人参、タマネギ、セロリ、ニンニクも炒めて、二日ほど煮込んだ牛骨とともに五日ほど煮込む」と語った。
  • ソウル市鍾路区にあるフレンチレストラン「L’ABRI」のオニオンスープ。数日かけてつくった肉汁を使用する(写真左)。右はソウル市中区にあるイタリアンレストラン「La Cantina」のオニオンスープ。牛肉のスープに任実ピザチーズをのせ、食感を生かしている。/キム・ジョンヨン映像メディア記者、ヤン・スヨル映像メディア記者
    ▲ ソウル市鍾路区にあるフレンチレストラン「L’ABRI」のオニオンスープ。数日かけてつくった肉汁を使用する(写真左)。右はソウル市中区にあるイタリアンレストラン「La Cantina」のオニオンスープ。牛肉のスープに任実ピザチーズをのせ、食感を生かしている。/キム・ジョンヨン映像メディア記者、ヤン・スヨル映像メディア記者
     このスープを使って、刻んだ牛肉、タマネギ、セロリ、人参、ニンニク、月桂樹、ハーブ、コショウ、卵の白身などでコンソメ出しを取る。炒めたタマネギとコンソメを入れてその上にバゲット、スイスのグリュイエールチーズをのせ、オーブンに入れれば完成。濃厚な味わいとタマネギの食感は、ふかひれスープのようでもある。チャン・ジョンギさんは「タマネギを薄くスライスするほど食感がいい。家でつくるときは、コムタンや市販されている牛骨スープを使うのも方法の一つ」と語った。

    ◆米国で流行し、世界中に広まる

     オニオンスープが世界的に人気を集めるようになったのは、1960年代に米国でフランス料理が流行してからだ。その役割を担ったのがシェフのジュリア・チャイルド。ジュリア・チャイルドを主人公にした映画『ジュリー&ジュリア』でも、料理の授業の初日にタマネギをスライスする方法から学ぶ。

     ソウル市瑞草区にある「TAVERN38」のシェフ、コ・ビョンウクさんは米国ラスベガスの「Bouchon」で初めてオニオンスープを味わい、ナパバレーにある「Bouchon」で料理を学んだ。コ・ビョンウクさんは「牛肉よりも鶏肉の方がすっきりしており、鶏肉でだしを取る。家では市販されている参鶏湯(サムゲタン=丸鶏の中に韓方薬の材料やもち米を詰めたスープ)用スープやチキンストックを使うとよい」と語った。これに鶏の足、人参、タマネギ、セロリ、長ネギ、シイタケ、タイム、ローズマリー、コショウ(白・黒)、月桂樹の葉などを加える。スープに青陽唐辛子を入れるのが秘訣。こうしてつくったスープを炒めたタマネギとともにスープボウルに入れて、4種のワイン(赤、白、シェリー、ポート)とブランデー、コニャックを加え熱する。その上に水分を飛ばしたバゲットとエメンタールチーズ、コンテチーズを1対2の割合でのせ、オーブンに入れて完成。コ・ビョンウクさんは「12ー18カ月ほど熟成させたコンテチーズの香りが最もよく合う」と話している。

     甘みのあるタマネギとブランデーの香り、青陽唐辛子の辛さがソフトな調和をなしている。コ・ビョンウクさんは「酒を飲んだ翌日、酔い覚ましにピッタリだ」と語った。しかし、食べ終わると、ウイスキーが1杯飲みたくなった。
イ・へウン記者
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