スペインの画家パブロ・ピカソ(1881-1973年)が23歳のときに完成した「貧しき食事」。亜鉛板を用いて制作された作品だ。彫刻技術に対するピカソの初期の試みの一つだ。
見るだけで憂うつになるようなこの作品には、男女が登場する。左目を閉じた男性と、その隣に寄り添い座っている女性だ。二人は何の関係もないように別の場所を見つめている。食卓には粗末なパンとワインしかない。男性の細長い指ややつれた体、角ばった顔、うつろな表情から、貧困とアルコール依存症の哀れさが感じられる。実際に、作品はアルコール依存症の患者を描写したものだ。このようにもの悲しい雰囲気は、当時、親友の自殺により憂うつな時期を過ごしていたピカソの作品の特徴でもある。
カトリック大学議政府聖母病院精神健康医学科のイ・へグク教授は「アルコールはカロリーが高いが、栄養素はなく、食べ物に含まれるビタミン、ミネラルの吸収率を下げる」とした上で「アルコール依存症が続くと、水分が不足し、筋肉量が減り、やせこけてしまう」と語った。
「アルコール中毒者たちは、飢えを感じたとき、反射的に飲酒に対する欲求がわいてきて、飢えを酒で満たそうとする」とした上で「飢え、飲酒、憂うつ、無気力、食欲低下、飢えを反復する悪循環が起き、さらにどんどんやせていくケースが多い」と、イ・へグク教授は話している。絵の中の男性が、典型的な重度のアルコール依存症患者の姿というわけだ。
イ・へグク教授は「アルコール中毒の治療は、ひとまず飲酒を中断するのだが、その場合、禁断症状が出る」とした上で「1-2週間入院して禁断症状の治療をしたり、症状がひどくない場合は1週間に2、3回、外来で除毒治療を受けることができる」と語った。不安や自律神経失調症、不眠などの禁断症状や栄養失調は輸液と薬物で解決し、抗渇望薬、抗うつ薬などの薬物と認知行動療法でアルコール中毒から抜け出すことができる、とイ・へグク教授は説明した。感情のスペクトラムが深く広い若者は、憂うつな気分になりやすい。これに打ち勝ち、耐えれば、ウイットに富んだ画家ピカソのようになれる。